佐藤泰志追想集
「きみの鳥はうたえる」
目次
表紙題字 安保勝順
グラビアイラスト 北 館夫
発行に寄せて 佐藤泰志追想集を発行する会 代表 陳 有崎
佐藤泰志論ー途絶せし志、されどその魂の輝き、いまだ眩しさを失わず
日本近代文学会会員 北村 巌
佐藤泰志作品集
随筆 赤蛙を読んで/先輩から/十年目の故郷/青函連絡船のこと/背中ばかりなのです
詩編 青春の記憶/突然に/ニューレフト/鳥/走光/僕は書き始めるんだ/そこのみにて光輝く
小説 市街戦のジャズメン
回想
1,岸壁にたたずみ、遠く連絡船を眺めていた頃(少年時代)
小学生の泰志ー大浦 昇 思い出すことー太田力夫 夏の同期会への返事ー大渕悦子
ちょっと生意気で大人だった君ー稲村由利子 泰志君と思い出ー岩田静代 佐藤五ー吉田ミサヲ
佐藤泰志君の思い出ー岡田賢一 二十二年ぶりの電話ー永田真理子
ぼくは作家になるんだー佐野佳津子 泰志が残してくれた思いでー水野憲雄 はにかみ屋の泰志君ー押澤正治
2,屋上に立ち、フェンス越しに海の向こうを見つめていた頃(高校時代)
俺は血の匂いがするだろ?ポゥリイー田原迫春代 佐藤泰志君の思い出ー柿村賢二
読書会の思い出ー鈴木英二郎 泰志先輩ー島津 彰 愛の表現についてー小坂良子
長谷川軍曹のころー長谷川圭作 佐藤泰志の思い出ー上平 明 佐藤泰志との思い出ー池田 隆
S氏への思いー高橋信子
3,机の前に座り、作家という生業を背負おうとしていた頃(東京時代以降)
静岡にてー佐野明美 こわれそうな人ー中村みな子 ある海峡物語ー野村俊幸
二十三年ぶりにー植木景子 泰志、また一緒に出来るかなー上木 実
時代を挑発する文学ー成田隆雄 雪のゴールデンバットー上戸久二 遠い日ー横谷 芳枝
はしゃいだ同窓会ー渡辺譲二 泰志追想ー四宮良子 青春という名の電車ー四宮 響
絵は口ほどに物を言いー田中 文夫 佐藤泰志の小説と私ー浅野元広 生き急ぐ心ー遠山 章
喜美子さんへの手紙ー遠山みち子 泰志君のことー高専寺赫 まだ終わってないよー福間健二
4,泰志の死を悼む文章のかけら(同人誌から)
佐藤泰志と中高時代ー浅野元広 一九六八年夏の泰志君ー四宮良子
佐藤泰志と黙示の時代ー西堀滋樹 もう一人の芥川賞(候補)作家ー西山静子
悔しいね泰志さんー佐藤玲子 死せる文士ー岡田大岬 光を追ってー鎮魂・佐藤泰志ー白井雄三
『佐藤泰志追想集』発行によせて 佐藤 喜美子
佐藤泰志年譜
佐藤泰志書誌目録
協力をいただいた方々
編集後記
発行 佐藤泰志追想集を発行する会
発行人 陳 有崎
編集人 西堀 滋樹・田沢 義公
発行日 1999年9月20日
頒価 500円
追想集を希望される方は、メールで連絡下さい。
頒価500円+送料でお分けします。
メール
<編集後記>より
泰志の死から、もう十年近く過ぎようとしている。そう、わたしたちは五十歳になったのだ。すでに半世紀を生きてしまったわたしたちは、どこかで〈死〉を意識するような年齢になってしまった。自分たちの五十年はなんだったのかという思いが、四十一歳の若さでこの世を去った泰志のことや、同じ頃に死んだ渋谷全市のことを思い出させたりする。しかし、過去形でしか青春を語ることが出来ないわたしたちのことを、泰志や全市はどこかで見ながら、ニヤッと笑い、こう言うに違いない。「おまえたちはいったい何をしているんだ?」と。
今回、多くの方々から送られてきた思い出の原稿や手紙、写真などを整理しながら、みんな胸のなかにそれぞれの泰志像を抱いているのだなと思った。わたしたちの胸の中には、小中高、そして東京時代のころの泰志の姿がそのまま残像のように止まっている。わたしたちは〈死者〉からいろんなことを学んでいるのかもしれない。
泰志が死んでから、この日本の姿は大きく変化した。泰志が描いたような若者が今もまだいるのだろうかと思うくらい、時代も、社会の有り様も、そして若者の姿も変わった。しかし、どんな時代になっても、その形は変わろうとも、人間が、そして若者が抱えている苦しみとか悲しみとか、怒りとか喜びとか、そんな心の有り様には変わりがないはずだ。その意味では泰志が描いた青春像・人間像は古くて新しいものであり、現代にも通じる世界なのだと思う。だからこそ、是非とも若い人たちにこそ、泰志が描こうとした世界を知ってもらいたいし、彼の作品を読んでもらいたいと思っている。この追想集がそのことのきっかけになってくれれば、わたしたちの追想集発行の目的はほぼ達成される。
泰志の追想集を発行しようという話が具体的になっていったのは、今年の三月末であった。あれから半年という短期間の取り組みでこの追想集は出来上がった。その意味ではまだまだ不十分なところが多々あるかもしれない。今後、誰かが何らかの形でさらに佐藤泰志を掘り下げてくれることを期待したい。
最後に、今回の発行にあたって有形無形の励ましやご協力をいただいた、佐藤喜美子さんをはじめとする多くの方々にこの場を借りてお礼を申し上げます。そして、陳会長をはじめ、今回の突然の呼びかけに対しても、快く応じてくれた仲間たちの友情に心より感謝したい。
(西堀 滋樹)